14.華麗なる変身
私はクリスの家に到着するなり、奥の部屋に通された。部屋に入ると両サイドにズラリとメイド達が並んでいた。
「この方たちは一体?」
私がクリスに聞くとクリスは優しく笑って言った。
「君に学園の制服をプレゼントしたくてね」
「え? そ……そんな、悪いわ……」
「いや、だめだ。今日は絶対に受け取ってもらうからね」
「え……でも……」
私がどうしていいか考えていると、クリスは無理やりメイドたちに命令した。
「さあ早く! ティアラを採寸してください」
クリスがそう言うと私はあっという間にメイドたちに取り囲まれてしまった。
「僕はここから出ていくけど、ティアラは採寸が終わるまでこの部屋から出られないからね」
そう言うとクリスは部屋を出ていった。
メイドたちはなれた様子でテキパキと私の体の採寸をしていった。採寸を終えたメイドは次々に部屋から出ていったので、私は一通り採寸を終えると一人部屋に取り残されていた。すると部屋の扉が開きクリスが入ってきた。
「明日までには出来上がるから、朝一番でメイドに届けさせるよ」
「お金は? 今は持ち合わせが無いので届けてもらった時でいいかしら?」
「お金はいらないよ。プレゼントしたいんだ」
「でも……」
「いいんだよ。君の作ったカイロや石鹸でうちのパープル商会もかなり稼がせてもらっているんだ。その御礼にプレゼントしたいんだ」
「ほ……本当にいいの?」
「いいんだよ。これでも安いくらいだよ」
「クリス、ありがとう」
私がそう言うとクリスは満面の笑みで答えてくれた。私は制服を着れることが嬉しくて明日の朝が待ち遠しく思った。
◇
次の日の朝、クリスの家のメイドが数人我が家にやってきた。服を届けるだけなのになんで複数人のメイドが来たのかわからなかったが、メイドたちを家に上げるとすぐに分かった。その中のひとりがメイク箱を持っていた。そのメイドはメイクアップ専門のメイドで服を着せたあとにメイクを施すように言われているそうだ。
私はここで断ってもせっかくわざわざ来てもらったのに悪いと思い、メイクをしてもらった。私は前の世界でもメイクは数える程度しかしていないのでイマイチわからないが、その私でもこのメイドの手付きは素晴らしいと思えるほど卓越した技術だった。
メイクを終えると同時にエリカが家に来た。昨日別れ際に朝一緒に登校しよう約束していたのだ。
私はメイクをした自分の顔が気になったが、友達を待たせるのは悪いと思い、急いでクリスからもらったばかりの制服に着替えると、エリカのもとに走って行った。
「おはようございます」
「………………」
エリカは私の顔を見るなり挨拶もせずに固まっていた。
「エリカどうしたの?」
「え……あ……テ……ティアラ様こそどうしたんですか?」
「ああ、クリスのところのメイドさんが来てメイクをしてくださったの、似合わないかな?」
「す!…すごいですぅーーー!!」
「え!? どうしたのエリカ?」
「どうしたもこうしたもないですよーー! ティアラ様。鏡で自分の顔ご覧になりました?」
「いえ、まだ見てないわ。そんなに変かしら?」
「何言ってるんですか! 逆ですよ! めちゃめちゃ可愛いですよーーー!! 絶世の美女、こんなに綺麗な人見たこと無いですよ!!」
「ほ……本当に? からかってないよね?」
「嘘だと言うんなら、ほら、鏡で自分の顔をご覧になってくださいよーー」
エリカはそう言うとカバンから手鏡を出して私に渡した。私はエリカから受け取った手鏡で自分の顔をみて驚いた。元からティアラの顔はきれいで整った顔つきだったので、そんなに変わらないだろうと思っていたが、想像以上にきれいになっていた。前世でも余裕でモデルになっていただろうと思えるほど綺麗だった。そばにいたメイドたちも私の顔を見てウットリした表情になっているのが分かった。
「ど……どうしようこんな格好で登校して大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ、メイクは淑女の嗜みですので、校則違反では無いですよ」
「そ……そいう問題かな?」
私とエリカが話しているとレンがやってきた。
「おい、おはよ……ん?!」
レンは私の顔をみて絶句して固まった。
「レン、おはよう」
私はレンに挨拶してレンの制服姿を見た。私がお願いした金の飾緒付きの校章をしていてプレートアーマーの制服がレンのがっしりした体型にとても似合っていた。
「レン、制服とても似合っているね」
「あ……ありがとう……テ……ティアラも……か……可愛いな……」
レンはそれだけ言うと真っ赤な顔をして目をそらした。私も男の人から可愛いと言ってもらってすごく恥ずかしかった。
「と……とりあえず学園に行きましょう」
「そ……そうだな」
私達が二人で行こうとするとエリカが興奮して言って来た。
「金の飾緒の校章を付けた男子学生と絶世の美少女のカップルが登校したらパニックになりますよ」
「そ……そんな。大げさよ……」
私はまさかそんなことが起こるとは思っていなかったが、残念ながらエリカの言ったことが現実になることをこのときの私は知るよしもなかった。
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