不滅のティアラ【15.アルフレッドとの再開①】

不滅のティアラ

15.アルフレッドとの再開

 私は自分の考えが間違っていたことを痛感した。学園に向かう道すがらすれ違う人が必ず私たちを見て立ち止まり、通り過ぎると振り返っているのである。学園の生徒も立ち止まりどういう訳か私達の後ろを付いて来た。それは学園の門をくぐった頃には行列となり多くの学生が塊となっていた。

「あれだれ? あの可愛い子は?」

「確か一年のティアラと言う子じゃないかしら?」

「うそ、私服で登校していた子?」

「見て! あの騎士科の男の子、金の飾緒しょくしょ付きの校章よ」

「すごい、かっこいいわ」

「ふたりとも付き合っているのかしら?」

 ぞろぞろと付いてくる群衆からコソコソと聞こえて来る話し声に私とレンは顔を赤くなってうつむいて歩いた。

 レンと別れて教室に入ると今まで見向きもしなかった人たちに囲まれてしまった。

「テ……ティアラさん。おはようございます」

「お……おはようございます」

「き……今日は一段と綺麗ですね」

「あ……ありがとうございます」

 周りに何故か人だかりができた。その人だかりの殆どが男子生徒だった。見た目が変わるだけで人の反応はこうも変わるものかと思った。私が男子生徒にちやほやされていると、その人混みをかき分けてクラスの女生徒が入って来た。女生徒は私の前に仁王立ちになった。

「あなた、今日アルフレッド様が登校するからそんなおめかししてきたの?」

「え? なんのことですか?」

 私は女生徒の言ってることが理解できなかった。

「ふん! 白々しい、今日アルフレッド様が登校してくる日だからあの方に少しでも気に入られようと思ってめかしこんでるんでしょ」

「い……いえ、違います。私はそんなこと考えていません」

「ふん! どうだか、まあいいわ、少し可愛くなったからってアルフレッド様がお選びになるのは私なのよ」

 女生徒はそれだけ言うとどこかへ行ってしまった。

 女生徒が言っていたアルフレッド様って? 王子のことかな? そういえば今日の学園の女生徒のメイクがいつにもまして濃いような気がした。みんなアルフレッド様という人に憧れているのかしら?

 私はそれ以上気にしないことにした。

 しばらくすると廊下の方からキャー♡、キャー♡ という黄色い声が聞こえて来て、人だかりが見えてその中心にアルフレッドが居た。やっぱりあの女生徒が言っていたアルフレッド様とは王子のことだった。私はメイクをした自分の顔をアルフレッドに見られるのが恥ずかしくなり、アルフレッドに気づかれないように窓の外を見ていた。

「ティアラ」

 私は近くで名前を呼ばれたのでゆっくりと呼んだ相手の方に向けると、ニコニコと笑っているアルフレッドが居た。

 その場にいる誰もが私とアルフレッドのやり取りを見ているのが分かった。

「あ……あの……お久しぶりです」

「ああ、やっと会えたよ」

 アルフレッドはじっと私の顔を見ていた。

「なんか見ない間に随分変わったな」

 アルフレッドがそう言った瞬間周りの女生徒がざわついた。

「あの……アルフレッド様、この方とお知り合いなのですか?」

 たまらず先程の女生徒が私との関係をアルフレッドに聞いてきた。

「ああ、みんなも聞いたことがあるだろう。この町で多くの疫病の患者を救ってくれた聖女のことを」

「はい、アルフレッド様。名前は確かティアラという少女だったと聞きました。え? まさか……」

「そのまさかだよ。その聖女がこのティアラだよ」

「「「「「「えーーーーーー!!!!!!」」」」」」

 その場に居た全員が私を見た。その中のひとりが私の前に来て跪いた。

「聖女様、私のところの使用人の子供を救ってくれてありがとうございます」

「私のところのメイドの家族も救ってくれてありがとう」

「おれのところも…………」

 何人もの生徒が私の前に来てお礼を言ってくれた。

「聖女様、俺と付き合ってくれ」

「俺も…………」

 どさくさに紛れて告白する男子生徒も出てくると、それを見ていた男子生徒は我先にと私の前に来てあっという間に大勢の男性に囲まれてしまった。

 私はどうしていいかわからず困惑していると、横から誰かに手を捕まれ引っ張られた。気がつくと一人の男子生徒が私を抱きしめていた。

「ティアラは俺の婚約者だ、だれも手を出すことはゆるさん!」

 私が顔を上げると私を抱きしめているのはアルフレッドだった。

「え? ア……アルフレッド様?」

 私は何か言おうとしたが、次の瞬間アルフレッドの顔が近づいて来て私はいきなりキスされた。

「「「「キャーーーー!!」」」」

 周りの女生徒たちは色めき立った。男子生徒は力なくその場で座り込んでしまった。

 私はいきなりのことで混乱して放心状態になっていた。昼休みになるまで授業が頭に入って来なかった。

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